変形性膝関節症について

症状に合わせた段階的治療と、
3D技術で速く正確な人工膝関節置換術

  • 左:保存療法と手術療法の間にバイオセラピーが増え、治療の選択肢が広がった
    右:これまでの治療の流れ

  • 「人工膝関節置換術」に用いられる人工関節の模型。左が部分関節、右が全体関節

初期の〝軟骨すり減り〟はヒアルロン酸注射が有効

 高齢化が進む日本では、関節症で悩む人が年々増加しています。当院は重症化した患者さんが来院されることが多いために手術例は多いのですが、一人ひとりに合うよう治療の選択肢を増やしています。軽症であれば生活指導による改善を行い、患者さんの症状の進行や状態を見極め、初期段階ではヒアルロン酸注射、次の段階で新しく導入したバイオセラピー、かなり進行した場合に人工膝関節(半分)置換術、人工膝関節(全部)置換術と段階的に緻密な治療を行っています。
 膝関節は大腿(だいたい)骨(ももの骨)、脛骨(けいこつ)(すねの骨)、そして膝蓋骨(ひざの皿)から構成され、関節の周りにあるじん帯や筋肉で安定性を保ち、自由に曲げ伸ばし運動ができるようになっています。それらの骨の表面は、弾力性があって滑らかな軟骨で覆われ、半月板もそうした軟骨の一つです。軟骨には、関節を動かしたり体重がかかったりした際に衝撃を吸収するクッションの役目があり、年齢を重ねるにつれて軟骨がすり減り、痛みを生じるようになります。その状態が慢性化し、関節の隙間が狭くなったり、とげ状の骨がレントゲンで認められたりすると「変形性膝関節症」と診断されます。変形性膝関節症は女性に比較的多く、年齢や肥満にも関連すると言われています。立ち上がる、歩く、階段を下りるといった体の動きに対して痛みが現れ、膝に水がたまって腫れることもあります。
 症状が進行した場合、ヒアルロン酸注射が有効です。多くの場合、この注射で痛みはとれますが、それでも痛みが続くようなら、さらに高分子ヒアルロン酸注射を打ちます。これで大半の患者さんの症状は改善され、日常生活が快適になり、スポーツにも復帰することができます。

自然治癒力を生かした最先端のAPS療法を導入

 ヒアルロン酸注射で改善しない場合に当院では「人工膝関節置換術」を行っていましたが、その前段階での治療として、2019年春に新しくバイオセラピーを導入しました。バイオセラピーとは、自分の細胞や血液由来の成分を使い、傷んだ組織の修復を行う新しい治療法です。
 膝関節症の関節内では、軟骨の破壊成分を作り出す炎症性サイトカインという悪いタンパク質の働きが活発になるのですが、私たちの体の中にはこの働きを抑える良いタンパク質も存在します。血液由来のバイオセラピーであるAPS療法は、患者さん自身の血液から炎症を抑える良いタンパク質と軟骨の健康を守る成長因子を高濃度に抽出したものを、膝関節内に注射で注入し、炎症バランスを整え炎症や痛みを改善し、軟骨破壊の抑制が期待できます。健康保険適用外の自由診療ですが、できれば手術をしたくないという患者さんの選択肢として注目されています。

「人工膝関節置換術」は3Dと立体模型で効率化

 重症化した際は「人工膝関節置換術」を行います。痛みの原因であるすり減った軟骨と傷んだ骨の表面を切除し、金属でできた人工関節に置き換える手術です。人工関節はマルチ方向に動く構造なので力が一点に集中せず、摩耗が少なくてすみます。
 当院では人工膝関節置換術の前に、患者さんごとにCTで骨の形態を読み取って正確に3Dデータ化し、人工関節を入れるために最適な角度や位置を割り出すシステムを導入しています。コンピューター画面上で3Dシミュレーションを行い、人工関節の設置位置や角度、サイズを0・5㎜単位で調整して精密な術前計画を立てます。そのデータを海外の医療メーカーに送ると、患者さんごとの状態を再現した樹脂製の膝の立体模型と手術補助器具(ガイド)が3Dプリンターで作成され、約1カ月後に届きます。
 手術は事前のシミュレーション通りに患部にガイドを合わせて骨の切除や人工関節の設置を行います。従来に比べて手術がより正確で速く、安全性が高くなったため、患者さんの身体への侵襲は小さくなり、手術時間は平均で1時間15分程度です。
 当院ではこれまで膝関節全体を置き換える手術が大半で、人工膝関節(半分)置換術は、年間約250例の手術中わずか2例でした。昨年、英国のオックスフォード大学病院を訪れた際、そこでは人工膝関節置換術の20%が膝半分の手術だったこともあり、その経験を踏まえて、膝関節の悪い部分だけを置換する手術を積極的に取り入れるようにしました。より自分の膝に近い状態で動かすことができるので、患者さんの満足度も高いようです。

明野中央病院

こつ・かんせつ・リウマチセンター
センター長 
藤川 陽祐

profile

ふじかわ・ようすけ/昭和62年、大分医科大学(現・大分大学医学部)卒業。平成9年、大分医科大学大学院医学研究科を修了後、オックスフォード大学に留学。その後、大分大学医学部整形外科診療教授を経て、平成21年より明野中央病院。専門分野は整形外科、リウマチ関節外科、骨代謝。日本整形外科学会認定専門医、日本リウマチ学会指導医、日本リウマチ財団登録医。医学博士。

押さえておきたい
チェックポイント

APS療法とは

 APSとは自己タンパク質溶液(Autologous Protein Solution)の略称で、PRP(多血小板血漿)から抗炎症成分など関節の健康に関わる成分を取り出したもの。膝関節内にAPSを注入し、関節内の炎症バランスを整えていきます。自分の血液を利用するため安全性が高く、関節痛の抑制など、関節症治療への応用が期待される画期的な治療です。欧州ではすでに治療法として承認されており、米国では複数の医療機関において臨床試験が行われ、日本でも2018年8月より国に届け出が受理された医療機関で治療(自由診療)が受けられるようになりました。

\患者さんに一言/

要介護やそのリスクの高い「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」にならないよう、医師、リハビリスタッフ、薬剤師、看護師、栄養師と一緒に体操や料理を取り入れた楽しい予防教室を行っています。骨と筋力を鍛えて健康生活を続けてください。

こつ・かんせつ・
リウマチセンター
センター長
 藤川 陽祐

あけのちゅうおうびょういん

明野中央病院

理事長 中村 英次郎
こつ・かんせつ・リウマチセンター
センター長 藤川 陽祐

住  所
大分市明野東2-7-33
駐車場
96台
アクセス
JR大分駅から車で約15分
米良ICから車で約15分
診療時間
9:00〜12:00××
14:00〜18:00×××

※受付は8:30〜、終了時間の30分前まで

診療科目
整形外科、こつ・かんせつ・リウマチセンター、リウマチ科、ペインクリニック内科、内科、消化器内科、形成外科、麻酔科(森 正和)、リハビリテーション科、放射線科
▲ ページTOPへ